熊とワルツを

 

小説以外の感想を書くのは、約一年ぶり。久しぶりにアウトプットできる状態になってきたので、Qiitaの方に、スクラムマスター関連の話も書くつもりで準備してますが、まずはこっち。

プロジェクト管理の中の、リスクとどう向き合っていくかについてみっちり書かれたもはや古典。一冊丸っとリスク管理とは何かから、お前らちゃんとリスク管理をやれと繰り返されるので、ちょっとくどいくらいではありますが、それほどリスク管理が適切にできているプロジェクトは多くなく、かつ重要であると言えるでしょう。実際、本書に描かれているレベルで、きちんとリスク管理ができているプロジェクトに参加できたことは、自分は少ないです。悲しいことです。

リスク管理の重要性については、本書の第一部、第二部を読むことでわかるかと思います。読まなくても、実体験として知っている人も多そうです。そういう意味では本書で重要なのは第三部「リスク管理の方法」です。著者のツールの説明や、16章以降のインクリメンタルな開発の提案はアジャイル開発で馴染みがある人は不要かもしれませんが、それ以前のリスクを含めたスケジュール管理をいかに実施するかという点は、今読んでも色褪せません。褪せててほしいというのが本音ですが、残念ながらためになります。ITプロジェクトのプロジェクトは間に合うか、間に合わないかの二択(早く終わることはない)という著者一流のジョークには悲しい笑いが漏れてきます。

一読だけでも内容は頭に入りますが、リスク管理手順の具体的なものが22章にあるので、実践もしやすいです。今後、再読するときもここを手掛かりにして、使っていけそうです。

本書はとてもいい本です。こうやってリスク管理をしよう、それに基づくスケジュールを立て、プロジェクトを進めていこう、という気持ちになります。そして、気づきます。自分の立場で、プロジェクトのスケジュールに意見できるだろうか? 自分の立場がどこであれ、決定権がなければ上司にエスカレーションすることになるでしょう。上司は話を聞いてくれるでしょうか。そんなリスクに対する構え方は過剰だ、と言われるかもしれません。そんな時に、これを読んでください、と渡せるのが本書だと言えます。これを読んで、まだリスクに正しく向き合わない人は多くないでしょうし(とはいえ環境が許さないこともままあるでしょうが…)、向き合わない相手やプロジェクトならば…。あまり考えたくないですが、そういうこともあるかもしれません。ところで、本書の21章でデスマーチは多くの場合、価値のないプロジェクトを、献身によって価値をダンピングしているプロジェクトだ、と看破しています。なかなか至言だと思いますが、いかがでしょうか。